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第6話
「おかえりなさい。瑛さま」
「ただいま」
夕焼けが車内を照らす頃、瑛は助手席に乗り込み口を開いた。
「俺もさ、…彼女とか作った方がいいのかな」
「…はい?」
瑛の顔を覗き込んだ七世は、瑛の視線が歩道を歩くカップルに向いていることに気づく。
友達に何か言われたのだろうか、と七世は思ったが 詮索したところで彼の機嫌を損ねるのは分かりきっていた。
「…好きな子が出来たら、でいいと思いますよ」
至って模範的な答えしか出さない七世が、瑛は気に食わないらしく、「七世は?」と間髪入れずに訊ねてくる。
「七世は、俺に彼女が出来たら…どう思う」
「…そうですねぇ」
車のエンジンをかけ、七世は答えた。
「少し…寂しいかもしれませんね」
走り出した車の中で、瑛は横目で七世を盗み見る。その表情からは何一つ心の内は読み取れない。
七世には、模範解答などお見通しだったことも、瑛は知る由もなかった。
「…どうかしました?」
黙り込んだ瑛に、七世は優しく微笑みかける。
「今日、…ヤらせてよ」
「…物好きですねぇ」
「ダメ?」
「構いませんよ」
今思えば、あの時 底のない沼に嵌ったのは、俺の方だったのかもしれない。
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