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第4話 なんで
「「お疲れ様でしたー」」
新と一緒にバイト先を出る。
時計の針は20時を指していた。
バイト自体は17時に終わったけど、そこから片付けをしたり賄いを頂いたりしていたらこんな時間になってしまった。暗い夜道を肩を並べて、手を繋ぎながら帰る。
俺と新の家の方向はまるで違うから、初めは1人で帰る、と意地を張っていたけど、いつか、新に「俺と一緒に帰ってくれないと、バイト辞めます…」と頬を膨らませて言われたときから一緒に帰るようになった。
駅に着くまでの15分間。
たったそれぐらいしか新と一緒にいる時間を引き延ばすことができないけど、夜道を歩いていると、この世界に僕たち2人しかいないように錯覚させられる。
心地いい。
「ゆーひさんっ」
「わ、」
急に顔を近づけられ、思わず顎を引いてしまう
「ど、どーしたの?」
「いや、…ゆーひさん笑ってたからなんか良いことあったのかなーって……」
そう思って顔覗いただけなのに、あんなに顔を避けられるとは思ってなかった。俺と2人でいるのに、何考えてたの?
とかなんとか言って、ふてくされている。
そうやって、小さな子どもみたいに頬を膨らまして拗ねる姿も可愛い。
俺はいつも新のことしか考えてないのに、思わず笑みがこぼれる。
「フフッ、いや、こーやって新と2人で帰れるの幸せだなぁって思っただけだよ」
「…ゆーひさんさ、普段恥ずかしがるくせに、たまにこーやって甘くなるのずるい……」
新の顔が朱色に染まっていく。俺も。
「ゆーひさん、こっち向いて?」
「何?って、う、あッ」
夜道に立ち並ぶ街灯が銀色の糸を照らす。
「ッちょっ、急に、はダメって!しかも、人…!」
いつの間にか、駅のホームに着いていた。人は多くはないけどちらほらみかける。
「だってゆーひさんが可愛すぎるのがわるいんだもーん」
「なっ、そんな大きな声で…!」
「お別れのチュウくらいいいじゃん、寂しいんだもん…」
うぐ……、そー言われてしまうと返す言葉がない。。
…俺だって、寂しいし……
「…、あらた」
「ん?」
チュウ
今度は俺からキスをする
身長が高くてほっぺになっちゃったけど
「、え!?なに、ゆーひさんから初めてしてもらえた!ヤバい!」
「ッ、新が悲しそうな顔してたからしただけ!」
うぅ、やばい……いまさら恥ずかしくなる。。
多分、今、顔赤い
「ゆーひさん、もっかいしてよー」
「ダメだって、電車の時間来てるし」
「えー……」
大きいわんこみたいでかわいい、しっぽをパタパタしてるのが見えそう
「フフッ、…じゃあ、ばいばい」
「…ばいばい、」
最後は名残惜しそうに別れた。
新は俺が電車に乗るまで見守ってくれていて、それでまた幸せな気持ちになる。
「ただいまぁ……」
家に帰ってからも幸せな気持ちが続いている
今日は夜街に行かなくても、大丈夫かも…… それだけ胸が温かい。
寝る準備を済ませ、ベッドに倒れ込む
今日は本当に寝れる、……ねれる…
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「ッ、…ハァ、ハァ」
ヤバい、息が苦しい
身体が火照っている
なんで、おれ、さっきまで、なんともなかったのに………ッ
「、ゔぅ……ッ」
自分の気持ちとは裏腹にどんどん熱を孕んでいく身体に涙がでてくる
今すぐ、アレが欲しい
自分でしても、欲しいところに届かなくて、もどかしくて切ない
オモチャでも、もう足りなくて
勝手に、身体が、脳が、外へ出ようと意識が促される
いつの間にか、服を着替えて玄関へ向かっている
いや、これ、ちがっ……、いや違わな、い……ッ
…ごめっ、ごめんな、さい……
…おれ、ッ……おれ
誰に謝っているのかなんて、わからない
ただ、ひたすらに涙が溢れてくる
ガチャンとドアが閉まる
このときには、胸の温かさなんてとっくに消えていた
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