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第5話 1週間前
今日は新とはシフトが違い、1人、ロッカーで準備していた。
更衣室の扉が開く。
「おー、優陽」
「あ、佐山先輩。こんにちは」
2人、更衣室の中、何を話そうか迷っていると、先に佐山先輩から話を振られる。
「そーいやさ、お前どーすんの?」
「…へ?何がですか?」
「いや、新の誕生日何あげるのかなって。1週間後じゃん」
…誕生日?…誰の……って、
「……えっ!?」
佐山先輩の言葉に理解が追いつかない
新の誕生日が1週間前?
そんなの一度も聞いたことが無かった
なんで……
胸が詰まる
「…もしかしてお前、知らなかったのか?」
「…は、い」
俺は知らなくて、佐山先輩が知っていることに嫉妬してしまう
そんなの、したところで意味ないってわかってるのに。
余計なことまで考えてしまう
なんでこうなんだろう
「あー、まあなんだ、…新って自分のことよりもずっと優陽、優陽って感じだから、伝え忘れただけじゃねえの?あいつ犬っぽいからさ」
佐山先輩は、俺を慰めようとこう言ってくれてる。
…あー、佐山先輩に心配かけて、嫉妬してるのがバカみたいだ。
……まあ、愛されているのは、伝わってくる、し…
「フハッ、確かにそーですね、教えてくれてありがとうございます」
「おう、……そんで、何あげんの?」
う、…そうだ、何あげるのが良いんだろう……
カップルだったらなにあげるのが正解なんだろうか。
新の欲しいものを知っているようで、知らない
「…わかんないです、お金もあまり無いし……」
「…お前らもうシたことあんの?」
「!…何言って、」
「いや、まだならさ、自分にリボンでも巻いて、『俺が誕生日プレゼント』とか言ったらいいんじゃねーの?お金もかからないしさ」
「な、!?」
佐山先輩は名案だという風に笑いながら俺の方を見てくる。
そんなこと、恥ずかしすぎてできるわけない
まだ、軽いキスしかしたことないのに。
(ジャア、イツ?)
一生、デキナイ
服ヲ脱イダラ、バレテ、ソシテ…
…そして?
「……変なこと言ってないで、早くバイトしますよ」
「なんだよー、良い案だと思ったのにー」
****************
家に帰ってから、急いでネットで調べる。
ネットには、ネックレスとか財布とか時計とか、色々出てくるけど…
「うーん……」
何が良いんだろ……
今までの新との会話を思い出してみる。
けど、思い出そうとするほど出てこない…
なんか、本当に俺の話ばっかだなぁ………
「…って、そうじゃなくて!」
勝手に口角が上がってる自分がきもすぎる、、
うぅ……顔も赤くなってる……
そーやってあーだこーだしているうちに1時間も経ってしまっている。
あ、そーいえば…
ふと、前にネットで見た記事が思い出される
『プレゼントする際のアクセサリーにはそれぞれ意味があります。
例えば、ネックレスなら相手を束縛したい、ピアスならいつも自分の存在を感じてほしい、腕時計なら相手の時間を独占したいなど……』
「腕時計プレゼントするの良いかも…」
新はネックレスとかピアスとかはあんま付けてないけど、腕時計なら便利だし、なかなか壊れることないからずっと使ってもらえるし……
う、……大丈夫かな……重くないかな…
自分が思っているよりも独占欲が強いのは気づいていて、それに俺は汚いし、
でも、あんなに誰かを好きになったことも初めてだったから。
どうしようもなかった
だから、新と付き合った。
今だって、腕時計をずっとつけていつも俺を思い出してほしいと思っている自分がいる。
本当にできるなら新の時間も全て独占したい。
この気持ちに嘘はなくて。
プレゼント用に時計を探し始める。
「最近はラウンド型が主流だけど、新にはレクタンギュラーのほうが似合ってる気がする…」
新は俺よりも1個年下なのに、俺よりも大人っぽいし、知的だし…
あ、やっぱりメタルブレスのほうが良いかも、
とか色々考えていると、1つの時計に目がつく。
「うわ……これ、絶対新似合う……」
その時計は俺の理想通りの時計で、新がこれを身につけて似合っている様子も容易に浮かんで……でも、
「高いなぁ……」
金額は20万を優に超えている
流石に付き合って1ヶ月弱で、誕生日にこれは重すぎるよな……
しかも、お金もこんなに貯めるのなんて大変だし……
でも、他に良い時計も無くて、新には喜んでもらいたいし…
それに、高級なもののほうが、もっと新を独占できるような気分になる…、
なんて、こんなこと考えている自分が馬鹿らしいけど。
「……よし、腕時計にしよ…」
腕時計に決めたは良いものの、お金をどうするかだ…
やっぱり、身体売るのが早いかなあ……
自然とこう考えてしまっている。
実際、一回で結構な額が貰えるから、どのバイトよりも断然稼ぎやすいのは確かで。
でも、自分の身体を売ったお金でプレゼントを買われるのは嫌かな…
いや、バレなかったら大丈夫だ
今までだって、バレてこなかったし……
それなら、佐山先輩にここ1週間はバイト厳しいって言っとかないと
佐山先輩の連絡先を探し始める。
伝えたら、すぐに俺が新の誕生日のために準備したいことを汲み取ってくれて、簡単に許可をもらえた。
本当にありがたい、こんなに優しくしてくれる人なんてなかなかいないから。
そして、連絡先をスクロールしていき、いろんな人に、いつもの場所で会えるかどうか聞いていく。
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このときは、ただ誰かの誕生日を祝う、という初めての出来事に胸が高まって、細かいことなんて何も考えてなかった。
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