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第3-3話愛で捕らえる

 彼の言葉に私は憂いの表情を浮かべ、心を痛めたように見せる。  密かに内心は喜びに溢れ、高揚する気持ちを抑えられない。  王と同じ顔を持ちながら誰の愛も知らぬ、まっさらで憐れな孤児。  彼は他の色に邪魔されず、私だけの色に染めてもいい存在なのだ。今すぐここから連れ出し、すべてを教え込みたい。  だが今は彼という果実は青すぎる。  私が溜め込んでしまった行き場のない愛をぶつけても、満足に応えられず潰れるだけなのは目に見えている。  彼には強くなってもらわなければ。私だけのために――。  そっと彼の頬に手を添え、絶対に彼しか聞こえない小声で私は囁く。 「ならば私があげましょう。特別の愛を、貴方だけに……」  彼の目が点になる。戸惑いと、口先だけだろうという諦めの気配が色濃い。  自分なんか愛されない。拒絶ではなく、期待して叶わなかった時の傷を軽減するための諦め。私にも身に覚えがあるから、手に取るように分かる。  そんな苦しい思いなど彼には不要だ。  私は彼の額に唇を寄せ、優しい口づけを贈った。 「エ、エケミル様……?!」  あっという間に彼の顔が赤く染まる。与えた愛が一瞬で浸透したのが一目瞭然だ。  念を押しで彼の頬へ口付け、私は彼を愛で捕らえる。

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