11 / 106
第4-2話●手切れ
今日は彼が私の元へ来る日。
既に屋敷の者たちには話をしてある。そして彼の容姿は、隠れて護衛の任に就いていた者の口から伝わっている。
そのせいだろう。いつになく必死な形相を浮かべ、執拗に私の奥を抉ってくるのは。
こんなに私を悦ばせ、期待に応えている――だから捨てないで。
男から悲痛な心の声が聞こえてくる気がする。
確かに男の熱棒は私を何度となく絶頂へと誘い、この体によく馴染んだ。
今も私は間もなく、快楽の頂から飛び降りようとしている。
しかし、心はいつになく冷めている。
もうこの男が王に似ているとは思えない。
私は今、王を想いながら、ただの男に抱かれている。
体が昂り、どこまでも熱くなるというのに。
この男からの快楽に、心は冷めていく一方だった。
行為が終わり、男が衣服をまとう。
いつもはそのまま部屋を出て行くが、今日は寝台で気だるい体を休ませる私に被さり、見下ろしてきた。
「エケミル様……私は、貴方をお慕いしております……っ。どうか、これより先も、私を傍に置いて下さい……どうか――」
ついさっきまで抱いていた時と同じ、必死な形相。
でも男の目は私に恋焦がれているというより、震えあがっているようにしか見えなかった。
ともだちにシェアしよう!