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第4-2話●手切れ

 今日は彼が私の元へ来る日。  既に屋敷の者たちには話をしてある。そして彼の容姿は、隠れて護衛の任に就いていた者の口から伝わっている。  そのせいだろう。いつになく必死な形相を浮かべ、執拗に私の奥を抉ってくるのは。  こんなに私を悦ばせ、期待に応えている――だから捨てないで。  男から悲痛な心の声が聞こえてくる気がする。  確かに男の熱棒は私を何度となく絶頂へと誘い、この体によく馴染んだ。  今も私は間もなく、快楽の頂から飛び降りようとしている。  しかし、心はいつになく冷めている。  もうこの男が王に似ているとは思えない。  私は今、王を想いながら、ただの男に抱かれている。  体が昂り、どこまでも熱くなるというのに。  この男からの快楽に、心は冷めていく一方だった。  行為が終わり、男が衣服をまとう。  いつもはそのまま部屋を出て行くが、今日は寝台で気だるい体を休ませる私に被さり、見下ろしてきた。 「エケミル様……私は、貴方をお慕いしております……っ。どうか、これより先も、私を傍に置いて下さい……どうか――」  ついさっきまで抱いていた時と同じ、必死な形相。  でも男の目は私に恋焦がれているというより、震えあがっているようにしか見えなかった。

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