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第5-1話まだ彼が幼いからこそ
体を清めて身支度を済ませて間もなく、彼が屋敷に到着したと老執事が教えてくれた。
玄関まで出迎えてみれば、初めて出会った時よりも成長し、王の面影をより強くした彼がいた。
まったく馴染みのない場所で不安を覚えているのだろう。表情が硬い。
それでも私に失礼がないようにと顔に力を入れて引き締めている様が、なんとも初々しくて私の口元が緩む。
「よく来てくれましたね。待っていましたよ」
「あ……こ、この度は、オレを……いえ、私を召し抱えて下さり、ありがとうございます。精一杯エケミル様に尽くしますので、どうか、よろしくお願いいたします」
慣れぬ言い回しをぎこちなく使いながら、彼は跪いて首を垂れる。
若き頃の王が私に平伏する姿――あり得ない想像を彼に重ねて見てしまう。
王は王らしくいて欲しいと胸の奥がざわつくのに、背筋が歓喜に疼く。
我ながら厄介なところがあるものだと思いながら、私は彼に歩み寄ってしゃがみ込む。
「どうか顔を上げて下さい。私に対してそこまで畏まらなくとも良いのですよ。もっと肩の力を抜いて……ここが貴方の居場所になるよう、気軽にいて下さい」
「エケミル様……」
「今から屋敷を案内しますから、私について来なさい。貴方が世話になる方々にも紹介しますから」
「は、はい……え? エケミル様が、わざわざ案内を……?」
「屋敷のことは主である私が一番よく分かっておりますから。ほら、行きますよ」
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