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第7-1話愛しき王
◇ ◇ ◇
私の一日は日の出とともに始まる。
朝日が山から顔を出す間際に目を覚まし、簡単な食事と身支度を終えれば、早々に屋敷を出て王宮へと向かう。
よほどの緊急性がなければ、その日の執務はほぼ昼前に終わらせる。無駄を省いて徹底した報告と指示のみを心がければ、時の余裕を作るのはたやすい。
そして私が時間を割くのは――王との時間。
食事を終えた後、執務の報告をするために玉座の間へと向かえば、凛々しい顔立ちの愛しき王が私を待ち構えていた。
緩やかにうねりながら肩口まで流れる金色の髪、はっきりとした目鼻立ちに太く引かれた眉。飴色の瞳に私を映した瞬間、威厳に溢れた王の顔が柔らかく解れた。
「王を待たせるなど、臣下としてあるまじき行為……申し訳ございません、陛下」
玉座の王へ跪いて私が首を垂れると、明朗な声で「顔を上げてくれ」と促される。
言われたままに頭を上げれば、陛下は公では見せぬ温かな笑みを私に向けていた。
「早くお前に会いたくて、勝手に早く来てしまっただけだ。それに今来たばかりだ。気にしないでくれエケミル」
「……陛下にそこまで会うことを望んで頂けて、恐悦至極にございます」
「あとな、俺が後宮にいるとマクウスが構って欲しいと暴れてな……悪いとは思ったが、相手をするのにいささか疲れてしまって、ここへ逃げてしまった」
一笑してから陛下は眉を潜める。
「我が子は可愛い。俺の子を産んですぐに逝った妃の代わりにもっと構ってやればいいのだろうが、子供の相手をするのは一苦労だ」
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