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第7-2話愛しき王
陛下には二年前まで、清楚でたおやかな王妃がいた。
しかし流行り病に倒れてしまい、命を失われてしまった。幼きマクウス王子を残して――。
理知的で、心から陛下を支えてくれ方。密かに同じ者を愛する同志として、私は好ましく思っていた。
私では伴侶として隣に立つなど無理な話。羨ましいと思ってしまう日がなかったとは言えないが……。
そろそろ新しき王妃を探し、陛下の隣を埋めることを考えなければ。
胸に小さな痛みを覚えながら、私は微笑を浮かべた。
「後で私がマクウス様の元へ向かい、お相手しましょう。その間に御身を休めて下さい」
「ありがたい、甘えさせてもらう。だが……多忙なお前に頼り過ぎてしまうのは心苦しいな」
「ご安心を。陛下のお役に立てることが、私の元気の源ですから。どうか遠慮せずに頼られて下さい」
決して嘘ではない。私の愛しき王に必要とされ、望みを叶え、無くてはならぬ存在なのだと実感することが私のすべてなのだから。
それでも満たされない劣情は、見えない所で吐き出しているけれど。
亡き妃を思い出して憂いが滲んでいた陛下の顔が、再び明るさを取り戻す。
「そうか。ならば遠慮はしない。お前まで失わないよう、たくさん頼って力を満たさねばな」
……陛下。その言葉だけで寿命が百は伸びましたよ。
心の中で喜びを噛み締めながら、私は立ち上がり、日課である執務の報告を陛下に伝えていった。
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