21 / 106

第8-1話諦めのクセ

   ◇ ◇ ◇  日が沈む前に屋敷へ戻ると、どこからともなく護衛の長が私の隣に現れて耳打ちした。 「エケミル様、お帰りなさいませ。新入りのことで少しご報告が……」 「何かありましたか?」 「この二、三日、訓練をさせていましたが、体力や技術はこれから身に着けてくれそうなのですが……生来的に気が優しいのでしょう。何かを傷つけるということを、他の者よりためらう傾向が強いようです」  私は口元に手を置き、小さく唸る。 「ふむ……それは少し困りましたね」 「ええ。訓練を続ければ任務をこなせるまでにはなります。しかしいざという時に踏み堪えられず、安易に我が身を犠牲にするでしょう。すでに彼はエケミル様へ心酔しています。孤児の自分の命など軽いと考えているようですし、少々危ういですね」  敵が多い私を命がけで守るのは、護衛である彼らの役目。だからといって簡単に死んでもらっては困る。特に王の顔と瓜二つの彼を失うのは嫌だ。  今の護衛たちの中にも訳ありの者はいるが、彼のように愛に飢えた者はいない。そして奪ってまで満たす価値が自分にはないと思っているのだろう。  気が優しいのはあるだろうが、きっと諦めるクセがついてしまっていることも要因だと思う。

ともだちにシェアしよう!