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第8-2話諦めのクセ
早い内に何か手を打ったほうがいい。
少し思案してから、私は長へ告げた。
「夕食後、彼を私の寝室へ寄越して下さい。身を清めて寝間着を着させてあげて下さいね」
「……もう夜のお相手を?」
「ゆっくりと楽しむ、と言ったでしょう? 事を急ぐ真似はしませんよ。ただ教えてあげるだけです」
薄く微笑む私へ、長がわずかに目を丸くする。秘め事の相手をさせるのと何が違うのだと、軽く困惑しているのが分かってしまう。
それでも長は何も聞かず「承知しました」と言って気配なく姿を消す。直前まで視界に入れているのに、その姿がフッと見えなくなるのだから不思議なものだ。
何事もなかったように私は食堂に向かって歩き出す。
移動しながら夜のひと時を彼とどう過ごそうかと考える。
いったい彼が夜のことをどこまで知っているのか分からないが、唐突に私と体の関係を持つとなっても緊張するばかりで、何もできないか、あまりに拙い秘め事にしかならないだろう。
それに今回の目的は私を満たすものではない。
幼き彼が私のために呆気なく命を散らさぬよう、己の価値に気づいてもらうこと。
わが身可愛さで命を惜しまれても困るが、自分は無価値だからと抵抗せずに命を散らされても困る。
私のために生きてもらわねば。
王の代用として、私から溢れてしまう都合の悪い想いをすべて呑み込んでもらうのだから。
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