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第9-2話夜の語らい
「フフ、皆に何か言われましたか?」
「えっ、あの、エケミル様の期待にしっかり応えてこいと……わ、私は、まだ、何も知らないので、その、上手くできないかもしれませんが、が、頑張ります……っ」
どうやら私が夜にここへ招くという意味を、護衛たちから教えてもらったらしい。
確かにそのつもりではあるが、今はまだ早い。
私は小さく首を振り、彼に手を差し出した。
「そのようなことを求めて貴方を呼んだのではありませんよ。ただ話をしたかっただけです」
「話……ですか?」
「少し昔を懐かしみたくて……それに、貴方だけに話したいこともありますから」
わずかに彼から力みが取れる。どこか安堵した顔をしながら彼は私の手を取ると、ゆっくり寝台へと上がった。
そして隣に座ると、私の顔をまじまじと見つめてきた。
見れば見るほど王の若き頃に似ている。
私と王が最も同じ時を過ごし、語り合い、笑いながら触れ合った、成年前の輝かしい思い出の中にある王の顔と――。
我知らずに手が伸びて、私は彼の頬に触れていた。
「貴方は自分の顔が誰に似ているか、知っていますか?」
「私の、顔?……い、いえ、知りません。誰にも言われたことがありませんし、自分でもそう思ったことは――」
「貴方の顔は、陛下によく似ているのですよ。この国の王に……」
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