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第9-4話夜の語らい
「貴方を私の元へ来させたのも、その顔が欲しかったからです。陛下の代わり――がっかりしましたか? でも延々と誤魔化して、貴方の心を翻弄し、後でそれが分かって深く傷つけてしまいたくはありませんから、先にはっきりとさせておきます」
「……は、はい……分かり、ました」
「私はこれからずっと、貴方に陛下の面影を求め、叶わぬ望みを求めていくことでしょう。貴方が考えるよりも目を背けたくなるような醜悪なものも、見せることになるでしょう……それだけ貴方はこれから私にとっての特別な存在になっていく。どうか、ただの孤児と自分を軽んじることはしないで下さい」
今まで出会った中の誰よりも陛下に顔が似ている、という理由で求められたと知って、面白くはないだろう。どう足掻いても陛下本人にはなれず、自分だけを見てもらいたいと望んでもそれは叶わないのだから。
ただ、あまりにも似ているからこそ、彼は代えのきかない存在だ。過去の代用の相手たちとは違う。もし逆上して私を手にかけようとしたなら、抵抗せずにその手を受け入れるだろう。
まだあどけなさが残る顔を真剣に見つめていると、彼はそっと頬に添えていた私の手に触れた。
「あの、本当に、私でいいのですか?」
「ええ。貴方が良いんです……嫌ではありませんか?」
「嫌だなんて、そんな……だって、エケミル様の特別になれるなんて……畏れ多くて……」
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