照れながら泳ぎそうになる目を堪え、しっかりと私を見ながら笑ってくれる彼。 　――陛下なら最初から揺らがぬ視線で私を見つめる。顔がどれだけ似ていたとしても、やはり違う相手なのだと思い知らされる。 　それでいい。本当は陛下の代えなど誰にもできないことぐらい、最初から分かっている。 　ただ私の想いが溢れて陛下に届いてしまわないための捨て場が欲しいだけ。 　親の愛すら知らない彼は、そういった面でも都合が良かった。きっと貪欲に飲み込んでくれるだろう。 　くしゃり、と頬を撫でていた手を頭へ伸ばし、私は彼の頭を撫でた。 「少し疲れましたので横になっておしゃべりをしましょうか。私ばかり話してしまいましたので、今度は貴方の話を聞かせて下さい」 　先に私が夜具に潜り込みながら体を横たえた後、おずおずと彼も同じようにしてくれる。 　互いに向き合って横になり、彼からの話を待つ。 　……が、硬直するばかりで一向に話が始まらず、私は助け舟を出すことにした。 「ここの暮らしはいかがですか？　訓練は厳しくないですか？」 「あの、屋敷の方たちに良くして頂いて、とても嬉しいです。訓練は厳しいですけど、護衛の皆さんが全員すごい人たちばかりで……懸命に挑めば私も強くなれるんだと、頑張りたくなります」