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第10-2話違うと分かっていても

「フフ、期待してますね。陛下の望みを叶えるために少々強引に進めていることもありますので、こう見えて敵が多いのですよ。どうか私を守って下さい」 「はい、必ず……っ。この命に代えても――」 「貴方は私のために生きて下さい。絶対に死なぬようにしながら、私を守る……どうか誰よりも強くなることを目指して下さいね」  言葉にすれば簡単なことだが、決して容易な道ではない。  分かった上で私は彼に強さを求める。何があっても生き抜く強さを。  私の望みがどれだけ困難なことか理解したのだろう。彼はハッとして唇を固く引き結ぶ。  理解した上で彼は力強く頷いてくれた。 「絶対にエケミル様の期待に応えてみせます……っ」  迷いがなくなると、王の面影がより濃くなる。 『この国と俺に、お前の力は必要不可欠だと思ってる。頼むからずっと俺を支えて欲しい、エケミル』  もう過ぎ去った日の思い出が私の頭をよぎる。  年の頃は今の彼と同じくらいか、もう少し下だっただろうか。  夕暮れの中庭で真っすぐに私を見据えながら、陛下は私という人間と人生を求めてくれた。  小さく頷き、己の生きる道を定めたことを後悔したことはない。ずっと心が痛む道だけれども。  わずかに胸と体が疼きかけて、私は少しだけ癒しを求めようと手を伸ばす。 「エケミル、様……」  彼の手を握り、その温もりを感じながら目を閉じる。  微熱を宿したような熱さが心地良くて、私の中に積もっていた疲れが溶けて消えていく気がした。

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