33 / 106
第12-2話●拙い口づけ
私の言葉を聞くにつれて、彼の目の色が変わっていく。
人から獣へとなり変わろうとするような、瞳のギラつきに熱さ――獲物として狙われたことを察した瞬間、私の胸を鼓動が強く叩いた。
彼の体が動く。
私の肩を掴み、絶対に逃げられないよう捕らえてすぐ、彼は首を伸ばして私に顔を寄せた。
「貴方が欲しいです、エケミル様……っ」
返事をする間すら与えず、彼が私の唇を奪う。
強引で緩急のない、ただ唇を押し当てるだけの口づけ。
まだ何も知らない者の接吻など初めてだ。今まで相手にしてきた者の中で一番拙い。
しかし、それがいい。
誰の色もつけられていない真白きものを、私だけの色で染められるのだから。
本当はまだ交わるつもりはなかったが、彼が私を切望するのならそれでいい。
恐る恐るといった様子でゆっくりと唇を離した彼へ、私はうっすらと微笑んだ。
「それが望みならば、喜んで差し上げますよ。どうすれば私を深く捕らえることができるか、教えてあげますから……ね?」
甘く囁いてから、私は自ら彼に唇を重ねる。
そっと押し当ててすぐに離れてから、また重ねてを繰り返して唇の先で彼に戯れる。それから深く口付け、舌を挿し込み、何も知らぬ彼の舌へ絡まった。
ともだちにシェアしよう!