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第15-2話時は巡り
国全体がうだるような暑さにやられ、誰もが昼夜問わずに体を火照せる頃。
屋敷から王宮へ向かった直後、後宮の侍女長が私の元へ足早に寄ってきた。
長く仕えている古参の彼女は、いつも淡々とした表情を崩さない。しかし、この日は青ざめながら、焦りを滲ませた顔を私に向けていた。
「おはようございます。何かあったのですか?」
「ええ、閣下……陛下のお体が優れません。昨夜から熱を出され、今朝になっても下がる気配がなく……」
話を聞いた直後、私の足元から感覚が消えた。
まるで空の上にでも立っているかのような浮遊感を覚えながら、私は努めて冷静に振る舞う。
「最近暑い日が続いておりますから、そのせいで体を壊されたのかもしれませんね……医師はなんと?」
「先ほど診て頂きましたが、冴えぬ顔で首を傾げておられました。原因が分からない、と……」
陛下も人間。熱が出て寝込むことも稀にはある。
けれど今回の発熱はなぜか胸騒ぎがした。
この暑さが陛下の命を削り、私から奪うのではないのか、と。
すぐにでも駆け付けたいところだが、国の政を滞らせぬことが私の役目。
それに原因が分からないとなれば、流行り病にかかっている可能性がある。宰相の私までも病に倒れては、この国が困ることになる。
陛下が王となってから、より良くなるように力を合わせ、ともにこの国を育ててきた。
子がおらず、作る予定もない私にすれば、この国が陛下との間に授かった子供のようなもの。その積み重ねを崩すことはできない。
私は息を飲んでから侍女長の目を見た。
「どうか陛下を頼みます。しっかりと看病し、陛下を支えて下さい」
「分かりました……っ」
意気が消えかけた顔を侍女長はみずから叩き、気を引き締める。
そして私に一礼した後、踵を返して立ち去っていった。
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