46 / 106

第16-3話王の不調

     陛下の熱は一向に下がらなかった。  徐々に食は何も通らなくなり、薬湯や果実を絞り入れた水ですら、口にするのが厳しくなっていった。  医師が言うには、流行り病ではなく臓器に病がついてしまったらしい。  護衛の長が調査した限りでは、毒が使われた形跡はなかったとの報告を受けた。  臓器の病となれば治るのは難しいこと。  元気を取り戻した者もいるにはいるが、ほとんどは遅かれ早かれ死に至っている。  他言無用と医師には口止めをさせたのだが、話は王侯貴族たちに漏れ、陛下亡き後を見据えて王宮内はざわつき出す。  万が一陛下が身まかられてしまえば、次の王となるのは幼きマクウス王子。  王子はようやく十歳になられたばかり。玉座に就き、政を行うにはあまりに早すぎる。  そうなると現在宰相である私が、マクウス王子の代理として政の全てを仕切ることになる。  現在も陛下に全権を任されてはいるが、私たちは意見を交わし合い、より良い道を探り合い、陛下のお考えを汲んだ上で私は行動している。王の意思と手がしっかりと入っているのだ。  しかし幼き故に国に携わるための知識も知恵も乏しいマクウス王子。現陛下と同じようなやり方はまず不可能だ。せめてもう四、五年ほど多くを学び、少しずつ私が政を教え、たのもしき王を目指してもらいたいところ。  つまり数年は、完全に私が権力を握り、国を動かさなければいけないということ。

ともだちにシェアしよう!