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第16-4話王の不調
少し考えれば思いつく、一番可能性の高い未来。
だからこそ王侯貴族たちは、我先にと私へ近づきたがり、取り入ろうと必死になった。
今まで敵対してきたような者でさえ、私にすり寄り、選りすぐりの貢物を送ってきた。
――反吐が出そうだ。あっさりと手の平をひっくり返し、誇りもなく媚びへつらって。その者たちの目が己のほうにしか向いていないことがよく分かる。
逆に慌てることなく、己の持ち場で役目を果たし続ける者は信用に足る。皮肉にも私に好かれたいと思わない者のほうが、これから私に重宝されることになるだろう。例え陛下の容態が回復しても、しなくても――。
陛下の回復を願いながら、万が一身まかられた時の準備を進める日々は、私の心を残酷に追い詰めた。
すべては陛下が大切にしたいと願うこの国を乱さぬため。
国のために力を惜しみなく振うことが、私が陛下にお見せできる唯一の想いの証。
私たちが結ばれることなどあり得ない。
だからせめて、国を治めることにすべてを捧げ、陛下に寄り添いながらともに駆けてきた。恋人や夫婦よりも深い心の絆を、私たちは築き上げてきたのだと信じて……。
この絆さえあれば、私は死ぬまで国に尽くすことができる。
私だけが生き続け、長く片翼の喪失に苦しみながらであったとしても。
何があったとしても、私の覚悟は揺らがない。
どれだけ心の裏は劣情と狂気に塗れていたとしても、この想いだけは変わらないと己を疑うことはなかった。
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