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第17-2話ズレ
「お待ちしておりました。今、陛下は起きておられますから、すぐにお話できますので……私は失礼させて頂きます。ここから少し離れた所に控えておりますので、何かあればすぐに呼びつけて下さい」
いつも自分の調子を崩さない侍女長が、少々早口になっている。よく見れば薄い唇が戦慄いており、彼女もまた私同様に、情けない姿を晒すまいと戦っているのが分かる。
私が寝室へ入ると、入れ替わるように侍女長は退室して扉を閉める。
小さく息をついて身構えてから寝台へ向かえば、陛下は仰向けのままわずかに手を上げて弱々しく振り、私の訪れを歓迎してくれた。
看護用に寝台の脇に置かれた椅子へ腰かけた私を、陛下は目だけを動かして視界に入れ、儚く微笑まれる。
「よく来てくれたな、エケミル……急に呼び出してすまない」
「どうかお気になさらず。陛下と言葉を交わせることが、私にとっては一番の喜び。陛下のためならば、どこに居ようとも喜んで参りますから」
敢えて大仰で滑稽な口調で私が言えば、かすかに陛下から吹き出す声がした。
「幼き頃、ともに遊んでいた時は、俺が呼べば犬のように喜び勇んで走ってきていたな。未だにお前は、俺の犬のままなのか……?」
「そうですね……中身はあの頃と変わっていませんよ。自分を落ち着いているように見せる方法を身に着けただけです」
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