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第17-4話ズレ

 ああ、分かっています。宰相である私へ『この国を頼む』と託したいことぐらい。  陛下とともに育て上げたこの国を、私がこれからさらに心血を注ぎ、豊かにしていきますから――。 「――どうか、俺の息子のマクウスを頼む」  ……マクウス、様?  思い描いていたものとは違うことを口にされ、私は全身を強張らせてしまう。  固まっている私に構わず、陛下は話を続ける。 「あの子は早くに母を亡くし、父である俺とも別れることになる……聡い子ではあるが、いかんせんまだ幼い。どうかお前がマクウスの後ろ盾となり、俺よりも民を導ける立派な王になるよう支えて欲しい」  国よりも、自分の息子の心配を先にするのですか?  私とともに力を注ぎ続けてきたこの国よりも、血を分けた子が大切なのですか?  幼い次の王を不安に思い、私に託したいという気持ちは分かる。その思いを受け止める覚悟は十分にしていたつもりだった。  しかし、それはこの国を私に託す言葉を告げた後。  先に託されるべきは血筋じゃない。  陛下……貴方の心を一番占めていたのは、国ではなく息子だったのですね。  何事もなければ知らずに済んだであろう陛下の本音に、私の心は密かに崩れていく。  陛下への想いとは別に、純粋に国を良くしたいと尽くし続けた――陛下の前で見せ続けた私が、ぼろ、ぼろ、と何かが欠け、消えていく。  ずっと抑え続けてきた私の狂気に光が当たる。  ……まだ、出せない。  せめて、陛下の命が続いている間だけは――。

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