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第18-2話身の内で育ちゆく怪物

 気を抜くとわずかに心が感度を取り戻し、胸の奥底でどろりとした熱く仄暗いものを蠢かせる。  私の中で怪物が育っている。  放てば何をしでかすか分からない。  先王陛下への劣情と想いを糧にしてきたものが私の失意までも取り込み、正道を平然と踏み外す邪な存在。これを表に出せば私は乗っ取られ、狂ってしまうのだろう。  絶対に表に出してはならないもの。  今、私の心を揺らがせる訳にはいかない。  最愛の王を亡くした後、私が最も心を波立たせるのは――。  間もなく新王陛下が即位されて初めての新年を迎える頃。  湯浴みで身を清めた後、寝所を訪れた直後だった。  扉を閉めて寝台へ向かおうとしたその時、背後から突然何者かに抱きつかれる。 「……っ」  私よりも大きな体にたくましい腕。  振り向いて顔を確かめずとも、何度もその腕に閉じ込められ、この身を欲することを許してきた相手。不意を突かれて一瞬驚きはしたが、すぐに私は平静を取り戻す。  今までなら手を回してその頭を撫でてやるところだが、私は微動だにせず彼へ告げる。 「ここへ来るように、とは言っていないはずですが? 勝手に動かれては困ります」  抑揚のない声で突き放そうとする私の言葉に、彼が息を詰める音がする。  彼は私を陰で守る護衛であり、先王陛下への想いで身を焦がす私を慰めるための、身代わりの情夫――先王陛下を亡くしてから、私は彼を寝所に呼んでいなかった。

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