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第19-1話切望していたもの

 醜悪な怪物と化した本性が私の胸奥から這い上がろうとしてくる。  一度でも表に出してしまえば、もう取り返しがつかない。  先王陛下亡き今、私の理性と良心は薄氷のごとくの厚さにすり減り、今にも儚く割れてしまいそうだというのに。  どうか私を揺さ振らないで欲しい。  もう私は託された執政を形にし、逝った後に報告することでしか、先王陛下との繋がりを保てない――。 「このまま死ぬまで、貴方は悲しみに囚われ続けるのですか?……嫌だ。先王陛下の身代わりとはいえ、貴方は俺の欲しかったものをくれた。俺だけに特別な愛を……愛を知らなかった俺が、自分の中で愛を育むことができたのは貴方のおかげ……」  感情の昂りで彼が素の言葉で話しかけてくる。  先王陛下とよく似た顔のせいか、声まで似ている。敬語が抜けて口調までもが似て、まるで本当に先王陛下に抱き締められている気になりそうだ。  ……駄目だ。ずっと積み上げてきたものを崩す訳にはいかない。  力を振り絞って彼の腕から逃れようとするが、さらなる力で押え込まれ、ますます彼の体へ私の背中が密着するばかり。  そして――彼は私の耳元で熱く囁いた。 「もう、自由になって欲しい……愛している、エケミル」

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