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第19-2話切望していたもの
どれだけ許しても外してくれなかった、私への敬称。
切望していたものが叶えられてしまった瞬間、これまで意地で守り続けてきたものが一気に崩れていく。
許して欲しかった。
愛して欲しかった。
欲を含んだ熱い声で名を呼んで欲しかった。
心から血を流しながらも必死に堪えて、貴方の夢のために尽くしてきたのに、貴方の一番は私では絶対に応えることが叶わぬ、我が子のことだなんて。
想いが届かぬのは分かっていた。だからこそ、せめて貴方の隣でともに駆け、貴方にとっての一番の存在になりたかったのに。
……私は無駄に苦しみ続けてしまったのか。
だったらいっそ薬を飲ませ、溜め込んだ劣情を貴方に晒し、上に跨りこの身を味わってもらえば良かった。そして悔いはないと己の首を掻き切り、先に逝ってしまいたかった。
ああ、先王陛下を失う前から抑え込んできたものまで、私の中から溢れて止まらない。
報われぬ想いを心に宿してしまい、私はずっと苦しかったし、悲しかった。
寝ても覚めてもこの苦しさから逃してくれない貴方に、怒りすら覚える日もあった。
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