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第22-6話●※変わり果てても

「……え……今、なんと……」 「彼が真っ当なまま王になられると、私の望みが叶わなくなるのですよ。しかし殺してしまえば、王族たちが暴れて面倒になるだけ。だから毒で弱らせ、後宮に閉じこもってもらうことにしました」  うっすらと笑いを含みながら語られる内容に、俺は全身を強張らせる。  エケミル様は何を言われているのだ?  ずっとこの国のために力を注がれてきたというのに、それらを壊すような恐ろしいことをされるとは――。  わずかにエケミル様の首が傾き、妖しい微笑みを称えながら俺を見つめる。 「壊したいんです、何もかも……私を苦しめてきたものを壊して、自由になりたい」 「エケミル様……」 「……私を止めたいですか? 貴方が私を許せないというのなら、喜んで殺されましょう……貴方に奪ってもらえるなら本望です」  俺はしばらく無言でエケミル様を凝視する。  確かに俺は先王陛下の喪失に苦しみ続けるエケミル様を見るに堪えられなくて、その苦しみから自由になって欲しいと願った。だが、国を壊すという考えに至るとはまったく考えなかった。  どうしてこんな考えを持たれてしまった?  ……ああ、そうか。エケミル様が苦しみ、耐え続けていたのはこれだったのか。

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