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第23-2話若王が初めて求めた男
「イメルドは後宮へ召し上げます。強き獅子を、私の手元に置きたくなりました」
初めて公の場で自分の意見を主張されたマクウス陛下。
周りの誰もが驚き、そして何を考えているのだと困惑し、男を囲うとは……と嘆いた。
ディルワムは最初からイメルドを自分のものにしたかったらしく、怒りを滲ませ、こともあろうにマクウス陛下を睨みつけていた。しかし陛下は怯えの色を見せながらも命令を撤回せず、イメルドを手元に置かれた。
物心つかぬ赤子の時から陛下を知っている私には、その思惑は手に取るように分かった。
心優しいマクウス陛下は、憧れを抱いたイメルドがディルワムの慰み者になることを憂い、彼を守るために後宮へ召し上げた――純粋な優しさ故の判断。
しかし陛下をよく知ろうともしない者たちから見れば、齢十二の病に伏しがちな若王が、屈強な肉体の敵国の将を囲ったという事実しか分からず、子を成す気はないのかと嘆くばかり。
いつ死ぬか分からぬ身なのだから、早く跡継ぎを設け、憂いを消して欲しいという王侯貴族たちの本音があからさまに見えて、少しだけマクウス陛下に同情を覚えた。
何も事情を知らぬ若き王に、癒しを与えても構わぬだろう。
いくらディルワム将軍を苦しめたほどの猛者であったとしても、王の側室などという肩書きを背負っては、何もできはしまい。
この国が終わるまで、先のない虚弱な幼き王を慰めていればいい。
もし私の狙いに気づいたとしても、他国から来た人間が手を打つことなどできぬのだから――。
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