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第24-1話苛立つ面影

       しばらくはマクウス陛下の教育係につけた文官、アグイロスから後宮の様子を報告させていた。  憧れを抱いた強き者から与えられる刺激は大きいようで、陛下はイメルドのことをよく話すらしい。初めて接する異邦人でもあり、彼が夜伽に話す北方の国のことや戦のことなど、本を読むだけでは分からぬことも知る機会となり、知識欲を満たす良い機会になっていた。  それだけなら時が来るまで放置していても構わなかった。  王である以上、形式だけでも執務の報告をし、政の承認を得る必要がある。  十日に一度程度の頻度で行う王への謁見の際に、私はマクウス陛下の変化に気づいた。  虚弱の気配が今までよりも薄まり、芯の通った強さが滲み出ている。  肌艶が良くなっているせいもあるが、何より目の輝きが違う。希望に満ち、先を見据えようとする強き眼差し。先王陛下の面影が重なり、私は密かに動揺した。  マクウス陛下のお顔はどちらかといえば亡き王妃殿下に似て、穏やかで優しい顔つきだ。先王陛下のようなたくましく雄々しい姿とは無縁だ。  なのに少し強さが滲んだだけで、この世界の誰よりも先王陛下の面影を色濃く宿す。顔の作りで言えば、私を常に守り続けている情夫の彼のほうが似ている。同じ腹から生まれた双子のようだと言っても過言ではない。  しかしマクウス陛下が宿す強さは、あまりに先王陛下の気配を強く感じさせられてしまい、やはり血の繋がりは特別なのだと思い知る。

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