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第24-2話苛立つ面影

 もし先王陛下が生きていらっしゃれば――いや、逝かれる前にこの国を頼むと先に言って下さっていれば、マクウス陛下の強さに私は歓喜し、二代に渡って厚き忠誠を誓い、喜んで滅私を続けていただろう。  今の私はそう思うことなどできない。  むしろ腹立たしさが沸き上がり、すぐにでも私の手の者に始末させたくなってしまう。あれだけ先王陛下に焦がれていたというのに……。  強さを持たれては困る。  私は元の弱き者へと引きずり落とすために、弱体の毒を与えるよう仕向けた。  物理的に弱くさせられた陛下は、その日からは以前の未来を諦めたような輝きの消えた目で公に出るようになった。  先王陛下の面影が薄れて安堵したが、完全に前の通りに戻り切らない陛下に引っかかりを覚える。  何かがおかしい。弱くなったように演じ、密かに爪を研いでいるような――。  教育係のアグイロスの報告をもらいつつ、別の者にも後宮の様子を見させてみれば、陛下はイメルドに鍛えてもらっているらしく、力をつけているとのことだった。  どうやらさらに強い毒を与え、完全に心を折らなければいけないようだ。  手を打とうとした矢先、不測の事態が起きた。  今まで戦のみに目を向け、政には一切感心を示さなかったディルワム将軍が、陛下の後ろ盾になった。  強き者しか認めぬ男が、マクウス陛下を認めた。  それはつまり、私が想像しているよりも陛下は強さを身に着け、ディルワム将軍を認めさせたということ。

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