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第25-4話イメルドとの接触

「どれだけ財宝を目の前に積まれたとしても、陛下から離れる気はない。俺を配下にするのは諦めてもらおうか」 「そうですか……では、こちらへ来ないというならば、貴方の祖国に進軍し、新たに領土を奪いましょうか。先の戦からまだ立ち直っていませんからね。奪うのは容易いことです」 「我が祖国に対し、賊がごとくの考えを持つ者に従える訳がないだろう。それに今まで通りのやり方が、これからも通じると? 陛下を見くびらないでもらいたい」  私からの誘いには乗らず、脅しにも屈しない。その忠誠心は政を取り仕切る者として、純粋に好意が持てる。絶対に裏切らぬ者は良い手駒だ。使い勝手もよく、安心して重要なことを任せて私は他のことへ集中することができる。  陛下のことを抜きにしても欲しい人材だが、なびかぬのなら仕方がない。  恐らくこの国にいる人間の中で、イメルドは一番陛下の状況を理解している者だろう。自国の人間から、ここまで陛下の強さを口にできる者はいない。  私の元へ来ないならば、愛想を振りまく必要もない。微笑を浮かべていた顔から表情を消し、私は懐柔から牽制へと態度を変える。 「そうですか……己の利益に流される人間ではないだろうとは思っていましたが、残念ですね。陛下の件を抜きにしても、貴方を手元に置きたかったのですが――」  この者は手強い敵。私がそう決断し、意志を示した時だった。  話の最中に私の隣から黒い影が跳び込んできた。

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