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第30-1話それでも貴方に生きて欲しい

   ◇ ◇ ◇  時は来た。  この国は海と三つの国に面している。  彼らと裏で繋がり、私の国を同時に攻めて滅ぼさせ、奪った土地をそのまま攻めた国の領土にしてもらう――その準備が整い、私は最後の仕上げを行った。  北の国に話を持ち掛けた際、彼らはひとつ、特殊な条件を出した。  ディルワム将軍が捕らえたイメルドを自分たちの元に返して欲しい、と。  この密約を私は大いに利用させてもらった。  陛下にとってイメルドを特別な相手に仕上げ、弱点に変えた後。離れながらもいつかは手元に置けるようにという夢を見させ、彼を完全に取り上げる。  北の国境へイメルドが派遣されるように小競り合いをしてもらい、おびき出したところで接触してもらい、祖国へイメルドを返す。  いくら今は陛下に忠誠を誓っていたとしても、イメルドは祖国を蔑ろにする男ではない。心根が真っすぐな男だからこそ両国の衝突は避けたいと考え、自ら祖国に戻ることを選ぶだろう。  私の読み通り、イメルドは動いてくれた。  そして完全にイメルドを失ったマクウス陛下は、脆弱だった昔に戻られたように床へ伏し、後宮へ籠られてしまった。  頭の中で描いていた物語が面白いほど形になり、私は密かに胸を昂らせる。

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