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第30-2話それでも貴方に生きて欲しい

 残りはこの国を壊すことだけ。  宰相として多くの民を犠牲にさせないという名目を作り、内乱を起こして陛下を討ち、その命と引き換えに降参を示して三国にこの国を譲る。  三方だけでなく内側からも攻められるとなれば、国を守ろうと足掻くよりも、滅んだ後の身の振り方を考えて動く者が大いに出てくることは分かっていた。  先王陛下の時から宰相に就き、我が身を肥やすことばかりを考えてきた者をどれほど多く見てきたことか。  未だに陛下が正統な王として成長されても、長いものに巻かれたがる貴族たちが私を選び続けているのだから……本質は何も変わっていない。  国が壊れゆく運命が動き出す。もう誰も止められない。 「エケミル様、失礼します」  夜になり始めた頃、いつもより早い時間に私は彼を寝所に招いた。  ここへ呼ぶ時は必ず交わることになる。それが当たり前になっているから、部屋の扉を閉めた瞬間に彼は忠実な僕の仮面を外し、私に恋い焦がれるただの男の顔となる。  しかしこの日はそうはならなかった。  どこか神妙な面持ち。何かあるかもしれないという緊張感が滲んでいた。  ありのままの私を知り続けてきただけあって、彼は少しの変化から私を読み取れるまでになっている。  寝台に腰かけながら、私は彼の姿を改めて見つめる。  先王陛下と瓜二つの容姿は今も健在だ。  唯一違うのは眼の光。王としての威厳や自信に満ちたものを彼は宿していない。  ただ純粋に私だけを見て、色と熱を帯びる目。  もし先王陛下が彼の隣に並んだとしても、間違いなく彼を言い当てられる自信があった

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