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第32-3話足掻き

 すぐに決着がつくと信じて疑わなかった。  ――マクウス陛下が私の動きを読み、精鋭を後宮に集めて立て籠もり戦を仕掛けてくるなど、夢にも思わなかった。  陛下は愚王などではなかった。  イメルドと協力して恋に溺れる愚王を演じ、私の油断を誘いながら国難に立ち向かう準備をしていた。  多勢に無勢のはずが、後宮に範囲を狭めて守りを固め、異臭を放つ痺れの毒を流し、陛下たちは私の兵に抗い続けた。  若いながらも兵を上手くまとめる将と、ディルワム将軍を彷彿させるような疲れ知らずの猛者の存在も手強かった。  野外ではないからこそどれだけ私側の兵が多かったとしても、前線に並べられる兵の数は限られてくる。  数はこちらが多くても、戦いの練度は陛下側のほうが上。しかも事前に準備を進められていたこともあり、即座に攻め落とすことはできなかった。  彼らは粘った。国境で戦っているだろうイメルドやディルワムの助けが来るまで、どうにか持ちこたえたいという狙いなのだろう。  私としては正直手痛かったが、妙に嬉しくもあった。  決して諦めない陛下の姿は、先王陛下によく似ていたから――。  

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