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第32-5話足掻き

 尖塔へ向かう前に、私は黒衣をまとった彼を伴って屋敷の入口へと足を運ぶ。  手すりから覗き込めば、私兵と戦う襲撃者の中に陛下の姿を見つける。  あの儚げだった孤立無援の若王が、剣を握り、勇ましく戦っている。イメルドやディルワムといった猛者に比べれば未熟だが、こうして兵士と渡り合えるほどには強い。  不覚にもその成長に胸が昂ってしまう。  私が彼を追い詰めたというのに、始末しなければならないのに、陛下の成長が見られて嬉しい。 「どうか早く非難を。ここは危険です」  彼に促されるが、私は短く首を横に振って口早に告げる。 「今すぐ使用人を一人、ここへ連れてきて下さい。誰でも構いません。早く」 「……はっ。分かりました」  私の意図に気づいたのか、彼の声にためらいが見えた。  しかし忠義者の彼は言われた通りに使用人の下男を連れてくる。  困惑している下男に微笑みながら私は護身の剣を抜き、切っ先を突き付けてから下で戦う陛下たちへ告げた。 「我が屋敷へようこそ、マクウス陛下」  私の声に一同が戦いの手を止め、こちらを見上げる。  そして私のしていることに気づいて、陛下たちは目を大きく見開いて驚いた後、苦渋を舐めたように顔をしかめた。

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