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第32-6話足掻き
「せっかく陛下自らの足でいらっしゃったのですから、ぜひおもてなしをしなければ……マクウス陛下と二人きりで話をしたいので、陛下だけでこちらへ来て下さいますか? もし来て下さらないのであれば、彼の命はありませんよ?」
「自分の所の使用人の命を利用するというのか……っ」
「彼も立派な国の民……優しい陛下は放っておけないでしょう? さあ、どうされますか?」
「……分かった。条件を呑もう」
周囲から「陛下、いけません!」と次々に引き止める声が上がる。しかしマクウス陛下の決意は固く、二、三言、何かを伝えてからこちらへ続く階段を一人で上がってきた。
私の元へ辿り着く前に、小声で黒衣の彼に告げる。
「陛下に手を出さぬよう、他の者に伝えてきて下さい。純粋に陛下と話がしたいので」
「分かりました、そのように……エケミル様」
唐突に彼がその場へひざまずき、頭を垂れた。
「ひとつ、お願いがございます。これより私は薬を使い、強さを手に入れます。必ずお守りしますから……どうかすべてを終えられた時、永久に貴方を得ることをお許し下さい」
強さを手に入れる薬。その話は耳にしたことがある。
無類の力を得る代わり、人の身には余る力のせいで命を犠牲にする、と。
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