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第6話

 それから二週間ほどたったある日、ヨゾラは泊まりの準備をしていた。 「では明日の夜から、例のサークルのお泊まり会に行って来ます。帰りは、明日と明後日の夜泊まって、その次の日の夕方になると思います」 「わかった、気をつけてね」  ナナトは内心を隠して、いつもと同じように振る舞う。  この二週間、ヨゾラの顔を見るたびに問い詰めたかったが、なんとか耐えた。  でも、ヨゾラが触れてきても、こちらからは触らなかった。  ヨゾラの事がわからなくなって、とてもそういう気分にはなれなかったのだ。  準備の終わったヨゾラは、無表情でテレビを見るナナトの隣に座り、ナナトの手に自分の手を絡める。 「……どうしたんです、最近元気がないですね」 「そんな事ない、離して」  ヨゾラからのスキンシップには答えず、絡められた手を乱暴に振り解いて、テレビを見続ける。  ヨゾラは悲しそうな顔をしたが、すぐに微笑む。 「気乗りしませんか……ねぇ、ナナト」 「何」 「僕が帰ってきたら、僕とセックスしませんか」  ナナトは一瞬呆気にとられたが、すぐに元の無表情に戻る。 「……考えとく、ヨゾラが熱出さなかったらね」  ナナトは表情を変えないように、対応するのが精一杯だった。  ギチギチと拳を強く強く握って耐える。  ――裏切ったくせに……俺を、騙してるくせに……その俺とセックスするだって? 馬鹿にしてんのか、コイツは。  激しい怒りとともに、一抹の悲しさがじわりと込み上げてくる。  ――こんな事、知らなきゃ良かった。そしたら何も考えずにヨゾラと愛しあえたのに。  それ以上話さず、テレビを見つめるナナトに、ヨゾラは「おやすみなさい」と言って、リビングの端に敷いた布団に入る。  しばらくして規則的な寝息が聞こえてきたが、ナナトはとても眠れそうになかった。 「……嘘つき」  テレビを見つめるナナトの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。

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