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第13話

 ナナトは市街から離れた介護施設にたどり着いた。まだGPSの反応は施設内にある。  ――まだ、間に合う!!  入り口の受付に慌てて駆け込む。 「星月……じゃなかった、櫂ナナトと言います! 父の病室はどちらですか!?」  ナナトの勢いに受付の年配女性は目を丸くする。 「櫂さんの……、ああ、君はヨゾラ君のご兄弟ね。少し前にヨゾラ君来てたわよ、ちょっと待ってね」  女性は病棟に連絡を入れる。その時間さえ惜しいが、待つしかない。 「三階の外科病棟よ、病棟で部屋番号を聞いてね」 「ありがとうございます」  ナナトは階段で三階を目指して駆け上がる。  まるで飛ぶように階段を駆けていくナナトに、女性は微笑みをこぼす。 「ふふ、そんなにお父さんに会いたいのかしら」  病棟で部屋番号を聞き、病室に駆け込む。 「……ヨゾラ!!」  しかし、ヨゾラはいない。すでに退室した後だった。  階段で移動した為に道中すれ違う事もなかった。  ナナトはがっくりと肩を落とす。  ナナトはふと、機械に囲まれてベッドに寝ている人物に目を向ける。  記憶の中の父親より随分と年老いてみえたが、確かにヨゾラとナナトの父親だ。  枯れ枝のような手を握る。二人が幼かった頃、手を繋いだ、力強くて暖かな手を思い出し、ナナトは胸を締め付けられる。  機械音だけが静かな病室に響いていた。  そして、突然静寂を切り裂くように、雑音混じりの男の声が響く。  ナナトが持つ受信機からだ。 「ヨゾラ君を盗聴してたおバカさん聞こえているかなぁ? ヨゾラ君はねぇ、もう僕の物になったんだから、諦めてくれよ? ヨゾラ君は僕が幸せにしてあげるから安心してね」  バキッと機械が砕ける音がして、盗聴器から何も聞こえなくなった。  GPSも反応が消えた。  どちらも気づかれ、壊されてしまったようだ。 「くそっ……」  ナナトとヨゾラを繋いでいたか細い糸は断ち切られてしまった。手掛かりなしでヨゾラを探す事は困難を極めるだろう。  ナナトはヨゾラを探し出す方法を必死に考える。  そしてある人物が思い当たった。 「……そういえばバイトの店長、探偵と知り合いって言ってたな」

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