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第16話
「……何が助けるのは明日にしましょう、だ。お前の方の手配に時間が必要なだけだろ。それに、家を出ているとはいえ、櫂家と星月家の跡取り息子に借りを作っておきたいんだろ、お前」
「……ふふ」
リクの指摘にカイトは否定せずに、ただ笑う。
リクは、盛大なため息をついた後、チャック付きの袋をカイトに渡す。中には粉薬の袋のようなものが入っている。
「ほらよ、ゴミの回収に紛れ込んだ空き袋だ。十中八九あの子の兄ちゃんに使っているものだ」
「ありがとうございます」
「こんなモンを普通にポイポイ捨てるなんて、詰めの甘い奴だ。こんなやつに薬の持ち逃げをされたなんて、確かに組織の恥だな」
「今までは隙がなく、かつ、居場所がバレたら金をばら撒きながら逃げて、なかなか証拠を掴ませてくれなかったですからね。一箇所に留まるとは、ナナト君のお兄さんに余程執着しているのでしょう」
「……愛は身を滅ぼす、か。馬鹿らしい」
リクは鼻で笑うが、カイトはそれを聞いて微笑みを深くする。
「おや、貴方も経験がお有りでは?」
「うるせぇよ、その減らず口を閉じろ」
「閉じて欲しかったら、貴方が閉じさせてください」
カイトは楽しそうに笑って、リクを挑発する。誘うように、薄い唇を舌でペロリと舐める。
リクはカイトの言わんとしている事を理解し、それに応じるように獰猛な獣の顔をする。
「もう少し素直にお願いしてみろよ、今なら聞いてやらん事もない」
「いつも素直に言っても聞いてくれないじゃないですか。やめてって言ってるのに、やめてくれないし」
本当にひどいです、と頬を膨らませるカイトを見て、リクは鼻で笑う。
「お前には真摯さが足りないんだよ。……疲れてるし、明日は早いから、さっさと済ませるぞ」
「まったく情緒のない……。仕方のない人ですね、こちらへどうぞ」
カイトは部屋の扉を開けて、廊下の右端にある階段の途中で立ち止まり、手招きでリクを誘う。
リクは誘われるままに、階段を登って行った。
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