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第23話

 それから二週間後。  ヨゾラはナナトに付き添ってもらい、リクが紹介してくれた病院へ検査結果を聞きに行った。  診察が終わり、外のベンチでスマホを触りながら待つナナトの元へ、ヨゾラは足早に向かう。 「今日の結果では薬物の検出はされませんでしたし、もう問題ないとの事でした」 「そっか、良かった」  ナナトはヨゾラの顔を見て柔らかく微笑む。 「ナナトのバイト先の店長さんにも、お知り合いの探偵さんにも、迷惑をお掛けしてしまいましたね」  困った顔で笑うヨゾラの頭をナナトは立ち上がって優しく撫でる。 「大丈夫だよ、二人でちゃんと三百万払います、って約束したじゃん。あっちだって収穫があったって言ってたんだから、気にし過ぎちゃダメだよ」  あれからリクにもう一度依頼して、父親の実家である櫂家にコンタクトを取り、二人の祖父にあたる人物に会う事ができた。  初めて祖父にあってみれば、怖そうなお爺さんという感じで、二人は緊張したが、「父親のマナトにそっくりだ」と祖父が微笑むのを見て、二人も顔を見合わせて笑った。  父親の入院にかかる費用はすべて払うと祖父は言い、よければ櫂家に来ないかと言われたが、二人は断った。 ――めっちゃ面倒そうな事に巻き込まれそう。後継問題とか遺産相続とか。 ――同感です。貴方にお見合い相手を、なんて言われた日には、嫉妬で頭がおかしくなりそうです。 と、いった具合で、二人はまだあのアパートに住んでいる。  叔父はどうなったのか全くわからない。  ニュースで『星月コーポレーション副社長、突然失踪か。捜索難航、目撃情報なし』と言われていたのを小耳に挟んだぐらいだ。  おそらく二度と会う事はないだろう。 「ナナト?」  ヨゾラが色々と思い出して黙り込んでしまったナナトの顔を、心配そうな顔で見つめる。 「何でもない……ねぇ俺、お腹空いてきた」 「そういえば、もうすぐお昼ですね。どうします? 材料を買って帰りましょうか、冷蔵庫の卵をそろそろ使わないと……」  考え込むヨゾラの手をとり、自分の口元まで掲げて、手の甲に軽くキスをする。  それから手をひっくり返して、手のひらにもキスをする。 「ナナト……その、恥ずかしいです」  ナナトは頬を染めるヨゾラの耳元でそっと囁く。 「俺、ヨゾラが食べたい」

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