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括り紮げる 8

オレだけを欲して、愛してくれる珀英のメールは、心底嬉しかったし、安心した。 素っ気ない返事を返しながらも、本当は珀英が来てくれるのを、待ちに待っていた。 とは言え、仕事はしなくてはならないので。 いつもの通り、夕方からスタジオに入って、夜中ずーーっとこもって、メンバーと曲のアレンジを話し合ったり、楽器の演奏録って細かい部分を詰めて変更したり。 歌詞に口は出さないけど歌い方に要望を出したり、曲と曲の繋ぎ目を詰めたり、やることが満載(まんさい)で気づくと朝になっている。 そろそろ帰ろうと話しになり、ギターを片付けてスマホを見ると、珀英からメールが入っていた。 珀英が来ることも忘れて作業に没頭(ぼっとう)していたせいで、珀英からのメールに気づかなかった。 どうやら空港に着いたようで、真っ直ぐオレの泊まっているアパートメントに来るらしい。 時間的にもうすぐ到着してしまう。 オレはメンバーに挨拶もそこそこに、慌ててスタジオを飛び出すと、アパートメントに走って向かった。 背中に背負っているギターが揺れて痛いけど、そんなことを言ってる場合じゃない。 スタジオとアパートメントは歩いて15分くらいの距離にあるので、運動不足解消もかねて毎日歩いて往復している。 本日もロンドンは曇り空で、早朝の気温は低い。 いつもなら少し肌寒く感じるが、今日は走っているのでちょうどいいくらいだった。 早朝のジョギングをしている若い女性とすれ違ったり、散歩している犬に吠えられたりしながら、ロンドンの街を駆け抜けた。 アパートメントに到着して、外階段を駆け上がる。 2階の奥の部屋を借りているので、毎日階段を使っている。エレベーターがない建物なので仕方ない。 珀英は鍵を持っていないので、到着する前に部屋に戻っていたかった。 階段を上りきって、廊下を走りながら奥を見ると、珀英の後ろ姿が目に入った。 金髪の長い髪を1つに結んで、大きなスーツケースを携(たずさ)えて、黒いロングのトレンチコートを着て、オレの部屋の前に佇(たたず)んでいる。 オレの足音が聞こえたらしく、珀英がこっちを振り返った。 大きな漆黒の瞳に、高く通った鼻筋、少し厚めの口唇が嬉しそうに微笑んだ。 真面目な顔をしていたら、男らしい精悍(せいかん)な印象なのに、オレに対してはどこまでも優しい甘い顔をする。 「緋音さん!」 珀英がオレに駆け寄るよりも早く、オレは珀英の前に辿り着いた。走ってきたことを悟られたくなくて、浅い呼吸を繰り返して、ぶっきらぼうに言った。 「早かったな・・・」 「さっき着いたばかりです。緋音さんレコーディング帰りですよね?」 「ああ・・・」 珀英はにこにこ微笑んでそっと、いきなりオレの髪を、そっと優しく撫(な)ぜてきた。 優しい触れ方に少しドキドキしていると、そのまま顔を近づけてきたので、オレは慌てて珀英の胸を押し返した。 「・・・とりあえず中入れ」 ポケットから鍵を取り出して、玄関のドアを開けた。外でキスなんか、誰に見られてるかわからないからダメだって。 全く危機感が足りない。

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