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括り紮げる 13

さすがにサイフォンはなかったので、ドリップでコーヒーを淹れる。緋音さんの前に置くと、温度に注意しながら口元に持っていき、ゆっくりと3口ほど飲むとスマホを置いて手を合わせる。 「いただきます」 こういう、ちゃんとする所はちゃんとするから、本当に可愛いなって思える。オレもいただきますをして、フォークとナイフを手にする。 緋音さんは食事中にスマホを見ることはしない。美波ちゃんにして欲しくないことはしない事にしているらしい。 たしかに子供の前でしたら真似するから、できないよな。 緋音さんは無言で、結構早いペースで食べていく。いつもより早いペースで、サラダやベーコンエッグを口に入れていく。 フレンチトーストが半分もなくなった頃に、ちょっと驚いて心配になって見つめた。 ロンドンの食パンは日本のより若干小さくて、8枚切りより薄い感じだけど、それにしても早い。 サラダはもうないし、ベーコンエッグも半分食べたところで、オレはコーヒーを飲みながら、 「緋音さん、ちゃんと噛んで下さい」 「・・・っ・・・わかってるよ」 「そんなにお腹空いてたんですか?」 緋音さんは食べるのをやめて、軽く息をつきながら顔をあげると、オレを色っぽく見ながらチロリと口唇を舐めると、意地悪な笑顔を浮かべた。 「そりゃあね・・・帰ってきたら何か食べようかと思ってたのに、どっかの誰かさんが食べさせてくれなかったから」 「あ〜・・・すみません・・・」 シャワーも浴びないで犯りまくったからな・・・。 でも・・・。 思わずボソッと言う。 「でも緋音さんだってノリノリだったじゃん」 「ノリノリじゃない!」 小声で言ったのに聞こえていたらしく、緋音さんが顔を真っ赤にして声を上げた。 まあ聞こえるように言ったんだけど。 オレは笑いながら立ち上がる。 「フレンチトーストまだあるから、食べます?」 「・・・食べる」 空になった皿を取って、キッチンに持って行く。パンが小さいから足りないだろうと思って、2枚ずつ仕込んどいて良かった。 オレがフライパンにバターを溶かしてトーストを焼き始めると、緋音さんが、 「お前どっか行きたいとことかあるの?」 と訊(き)いてきた。 たぶんせっかくロンドンに来たんだから、観光でも付き合ってくれようとしているのかもしれない。 オレはトーストが焦げないようにひっくり返しながら、軽く頭を振った。 「いや、特には。前にもロンドン来てますし、観光地はだいたい行きましたから」 「あっそう」 「緋音さんに会いにきたから、緋音さんと二人でのんびりしたいです」 「・・・・・・・・あっそう・・・・・・・・」 トーストを見ながらでもわかる。 たぶん、緋音さん顔赤い。 こういうこと言われるの、本当に恥ずかしくて慣れないみたいだから。 わかってるから、ついつい言っちゃうんだよな。 照れてる緋音さんが可愛いから。 トーストが焼き上がって、緋音さんとオレの皿に盛って、振り返る。緋音さんが少し慌てたように顔をそらして、コーヒーを飲む。 真っ赤な可愛い耳が見えてるんだけどな。 綺麗な耳を見つめながら、オレは目の前に皿を置いて、そっと・・・赤い耳を人差し指の背の部分でなぞった。 「なっ・・にす・・・!」 「いえ、別に」 案の定(じょう)真っ赤な顔でオレを振り返って、緋音さんはきつく睨(にら)んでくる。妙に興奮した感じで、潤んだ瞳をして睨んでくるから、こっちまで変な気分になる。 欲情したような瞳(め)を見て、緋音さんが耳が弱いことを思い出した。 だからダメだって。 オレはまた色々元気になりそうになっているのを全部押さえ込んで、緋音さんの向かいの椅子に座った。

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