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括り紮げる 15
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ご飯を食べ終わった後、珀英は何やらずっとキッチンに立っている。
たぶんさっき言ってた作り置きのご飯を作っているんだろう。
それと同時にキッチンの横にある洗濯機を回し続けて、オレが溜めた洗濯物を洗ってはリビングの端に干している。
本当は一緒に何処かに出かけようかと思っていたけど、特に行きたいところもないって言うから、オレは仕方なくスタジオに入るまでギターの練習をしていた。
毎日リビングでギター弾きながら、前日の打ち合わせで決まったアレンジの練習や、より良い音が出せないかと試行錯誤しているから、いつもと同じなんだけど。
それでもやっぱり、珀英が側にいることでリラックスできていた。
本来だったらキッチンから聞こえてくる雑音が気に障(さわ)るんだろうけど、珀英がそこにいるという安心感のほうが勝って、作業に集中できた。
自分では全く自覚していなかったけど、どうやら多少ホームシックだったのかもしれない。
珀英は珀英で、オレの作業を邪魔するつもりはないので、洗濯物を干す時とかも静かに動いている。ロンドンの建物にはほぼベランダがなく、部屋干しが基本だ。
この部屋にもベランダはなく窓だけだから、リビングの端に部屋干し用のフックと洗濯ハンガーがある。
ロンドンは曇りが多いくせに湿度は低いから、洗濯物を部屋で干すと部屋の湿度が上がるし、洗濯物も早く乾くからむしろ一石二鳥らしい。
日本は晴れる日が多いし、湿度が高いから外で干すのが当たり前だけど、だいぶ事情が違うことに感心した。
そんな感じで珀英の気配を感じながら、珀英の動きを愉(たの)しみながら作業をしていたら、夕方6時くらいになったので、オレはギターをケースにしまう。
その気配を悟った珀英が、キッチンから声をかけてきた。
「緋音さん、スタジオ行きます?」
「ああ、そろそろ行かなきゃ」
オレは座ってたソファから立ち上がって、寝室に行きクローゼットからいつものコートを出して着る。
そのままリビングに戻ってギターを背負うと、ものすんごく淋しそうな顔をしている珀英が視界の端に入った。
思わず溜息をついて、視線を合わせる。
珀英は気まずそうに、ぱっ・・・っと視線をそらせる。
そらせながらも、チラチラこっちを見るし、拗ねた時の口唇の尖らせ方をしている。
「はぁ〜〜〜〜・・・」
思わず溜息をつきつつも、珀英の反応が丸っきり犬だし、犬が拗ねると可愛いし、妙に見捨てられない。
オレはギターを背負(しょ)い直す仕草をしながら、呆(あき)れた口調を装って、
「お前も来れば?」
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