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括り紮げる 18

*                 緋音さんが本当に恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしながら、手を繋がせてくれた。 ずっとずっと、こうして歩いてみたかったから、嬉しくて嬉しくて仕方ない。 日本では絶対できないから。 何処にファンの目があるかわからないから、一緒に歩くことすらままならない。 ロンドンだから、もしかしたら緋音さんも許してくれるかもしれない。 そんな期待を抱(いだ)いていた。 勇気を出してお願いしてみたら、緋音さんは困りながらも、嬉しさをオレに隠そうとしながら手を繋がせてくれて。 こんな風に手を繋げることが、奇跡のようだった。 ほんの数分でも手を繋げて歩けることが、ものすごく嬉しい。 緋音さんにはわからないだろうけど・・・すごく嬉しい。 緋音さんの手の柔らかさと、肌の滑らかな質感と、温かい体温と、恥ずかしそうな表情と、赤くなってる耳たぶと、少しだけ嬉しそうな気配を堪能(たんのう)する。 上からそっと緋音さんを覗(のぞ)き込む。 さっきよりはだいぶマシになったけど、それでもまだ頬が少し赤い状態で、口唇を少し尖らせて、瞳を伏せて歩く。 時々ちらっと繋いだ手を見ては、目を外らすを繰り返している。 オレが思ったよりも緋音さんが照れて、緊張しているのがわかった。 うっすらと手に汗もかいてるし、体温も少し上昇してるし、そんな緋音さんの変化が嬉しかった。 オレと手を繋いでいることで、ここまで可愛らしい反応を見せてくれることが、嬉しかった。 思わず指先でそっと緋音さんの手の甲を撫ぜる。 びくっ・・・と緋音さんの腕が肩が震えた。 体全部で大きく息を吐くのが伝わる。溜息じゃなくって、緊張と弛緩(しかん)なのがわかって。 可愛い。本当に可愛い。 オレだけのもの。 こんな緋音さんを知っているのは、オレだけ。 誰にも見せたくない、誰にも教えない。 がんじ搦(がら)めにして、閉じ込めてしまいたい。 ロンドンの高い空の下、少し湿った空気の中を、緋音さんの手を握って歩いたなんて、絶対に忘れられない思い出になる。 そうやって緋音さんの手と体温と表情や反応を楽しんでいたら、あっと言う間にスタジオに到着してしまった。 「あ・・・着いた」 そう言って緋音さんが、ぱっと手を放してしまった。 すんごい残念だけども仕方ない。 まだ赤い緋音さんの耳を堪能して、オレは軽く息を吐くと、目の前のビルを見上げた。 塀(へい)に囲まれたレンガ作りの大きなビル。正面玄関に向かう小道。 緋音さんはスタスタとその小道を歩いて行ってしまう。 オレは後を追って歩く。 緋音さんは重厚なデザインの扉を無造作(むぞうさ)に押して開けると、そのままに中に入って行く。 閉まりかけた重い扉を腕で受け止めて、緋音さんの後を追う。

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