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括り紮げる 22
あの緋音さんの、本録りを見られるなんてきっと二度とない。
ワクワクしながら見ていたら、緋音さんが諦めたように全身で溜息をついて、ギターをアンプに繋いで、チューニングをして、ヘッドホンをかけた。
チラ・・・っとオレを見て、気まずそうに顔をしかめて目をそらした。
ああ・・・そうか。
色気が欲しいって言われたから、オレのこと意識してるんだ。
でもたぶんそのために、クロエはオレをここに入れたんだろうな。
たしかにオレにマッサージされていた緋音さんは、色っぽくて嫋(たお)やかでエロかったから。
その様子を見てクロエはオレが恋人だと勘づいたのだろう。
そしてその色気が欲しかったから、録り直しを強要して、オレまでコントロールルームに入れた。
ギターを弾く緋音さんの視界にオレが入るように。
恥じらいや色香を失わないように。
さすが策士(さくし)だな。
女は怖い。
目的のためなら手段を選ばない。
そういうところ、嫌いじゃない。
録音機材の前に座って、楽しそうに待っているクロエの後ろ姿をチラッと見た後、ブースの中の緋音さんに視線を戻した。
緋音さんがギターを背負い直した瞬間、オレと瞳が合った。
ベットに入る前の、これから起きる情事(こと)を期待している、あの瞳(め)を緋音さんがしているから。
思わず。
オレは、緋音さんを舐めるように、口唇に当てていた指を、舐めた。
この思いがけない状況にオレも少し興奮していたし楽しんでいた。
わざと緋音さんを煽(あお)るように、セックスしている時のように、意地悪に笑って、ベットの中でするように中指をベロリと舐めた。
瞬間。
緋音さんが体をビクッと震わせて、瞬時に顔を真っ赤にして、思いっきり顔を背(そむ)けた。
これからされることを期待しながら、オレに悟られたくなくてする、いつもの仕草。
ああ・・・本当に・・・まるでセックスしてる時みたい。
思い出して。
ほんの12時間前には、貴方はオレに、めちゃくちゃに、ぐっちゃぐっちゃに、抱かれてたんだよ。
オレに全身舐められて、体の奥深くまで触られて、嬉しそうに喘(あえ)いで、奥深くまで何度も貫かれて、オレのをきゅうきゅうに締め付けて、何度も何度も犯されて、気持ち良すぎて気絶していたんだよ。
ねえ・・・・・・・思い出した?
緋音さんがオレを見ないようにしながらも、どうしてもオレに視線を戻しては、そらして、熱い吐息を吐き出している。
本当に・・・エロすぎ。
その顔、オレ以外の誰にも見せて欲しくない。
クロエは緋音さんの更にいやらしくなった変化を見て、嬉しそうにすると、ちらっとオレに視線を送ってから、問答無用でガイドをかけた。
緋音さんは音に反応して、反射的にギターを構えて、演奏を始める。
正直緋音さん的にはギターをまともに弾ける心情じゃないとは思う。
なんせ男であるオレとそういう関係ってのがバレた訳だし、ましてやオレがじっと見ている訳だし。
それでも、曲がかかった瞬間に、オレの可愛い可愛い緋音さんから、ギタリストの顔に変わるところは、さすがプロだなと感心する。
ヘッドホンをしていないオレには、緋音さんが演奏している音は聞こえないけど、緋音さんの動きをずーーーっと目で追っていた。
緋音さんはうっすら頬を染めたまま、ギターを握って、時々オレを見ては目を外らしてを繰り返して、恥ずかしそうに顔を歪めている。
きっと絶対、オレにこんなところを見られるのが恥ずかしいんだろう。
普通のレコーディングなら全然平気だろうけど、注文がまさかのセックスしている時の色気だもんね。
そりゃあ、オレがいたらオレとセックスしている時のこと思い出すよね。
最低だけど、最高な注文だな。
こんな緋音さんを見ることは、きっと二度とない。
スマホで録画しておきたいくらいだけど、怒られるから出来ない。
これが見れるだけでも、ロンドンまで来た甲斐(かい)があった。
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