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第6話 満天の星空
三人ですきやきをたらふく食べたあと、浩貴は翔多を送って行くことにした。
翔多は今、母方の伯父さんの家に下宿中の身だ。
二人は翔多の下宿先まで、並んで自転車を押しながら歩く。
浩貴の自宅から彼の下宿先までは、ゆったりゆっくり歩いても二十分くらいである。
「すきやき、すごくおいしかったけど、浩之くんがいないときに、あんなごちそう食べちゃって、あとで浩之くん、怒っちゃわないかな?」
翔多が少し心配そうに、そんなことを口にした。
「大丈夫。あいつもしっかり友達の家でごちそう食ってるよ」
浩貴が彼の瞳を覗き込んでそう言うと、翔多は愁眉を開いた。
「それなら、良かったー」
そして、不意に左手を思い切り夜空へ伸ばす。
「わー。見てみ、浩貴。空、満天の星だよー」
「ほんとだー……って、出てねーって、星。思いきり曇ってますー」
一面雲に覆われた夜空を見上げて、浩貴は苦笑するが、
「浩貴と一緒にいる夜は、オレにはいつでも満天の星空が輝いて見えているんだもん」
そんなかわいいことを言う翔多。
「…………」
「わ。浩貴、真っ赤になっちゃってー。かーわーいーいー」
翔多はいたずらっ子のように笑うと、人差し指で浩貴の頬をつついてきた。
……やばい。翔多、かわいすぎる……!
ああ、翔多のこと抱きしめたい。キスしたい……!
しかし、溢れそうな思いを、浩貴が行動にうつすことは叶わなかった。
年季の入った和風の二階建て。
翔多の下宿先が目の前だったから。
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