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第8話 学校でのふたり②
「翔多、昨夜、おまえの携帯に電話したけど、何回かけてもドライブモードになってて繋がらなかったぞ」
すると翔多はきょとんとした顔をした。
「え? ほんとに? なんでそんなふうになってたんだろ?」
「おまえ、また間違ってドライブモードのキー押したんだろ?」
「そんな覚えないよ。っていうか、どれを押したら、そのドライブモード? になるかも分かんないんだけど」
「……翔多、IT関連会社の御曹司がそんなことでいいのかよ?」
「だって、苦手なものは苦手だもん、しかたないじゃん」
翔多は胸を張って堂々と言いきる。
「まあ、それは確かに。おまえ苦手だもんなー。携帯とかパソコンとか」
「うん!」
「いや、翔多、それはそんなに誇れるようなことじゃないから」
浩貴は苦笑した。
なにを隠そう翔多は大会社の御曹司である。次世代のIT関連を扱う会社なのだが、一人息子の翔多は、そういったものに半端なく弱い。
ほとんどの人がスマートホンを使っている中、翔多は、「使いこなせない!」とガラケーを愛用している。
……それさえも使いこなせていないんだからなー。
『浩貴ー、携帯、変な画面になっちゃって戻んないよー』 ……そんなふうに翔多が伯父さんの家の固定電話から、半泣きで電話をかけてきたことは数えきれない。
「オレ、機械とか難しいもの、嫌いだからしかたないよ、浩貴」
「翔多はよくても、おまえの親はよく思ってないんじゃないか?」
「うーん、でも、ま、なんとかなるって」
明るく言ってにっこり笑う。
その愛くるしい笑顔にはクラクラくるけど。
本当に翔多の能天気さには呆れるのを通り越して、頭が下がる。
浩貴が半ば感心していると、
「浩貴、順番来たよっ。かっこよく飛んで来いっ!」
翔多が力いっぱい背中を叩いた。
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