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第9話 幼馴染の少女

 放課後、浩貴と翔多が連れだって帰ろうとしていたとき、 「浩貴」  後ろから得道(とくみち)ミカコに呼び止められた。  ミカコは二人の同級生で、浩貴の幼稚園時代からの幼馴染だ。 「なに? ミカコ」 「…………」  ミカコは浩貴の顔をじっと見つめ、なにかを言いたげにしていたが、翔多のほうを一瞥すると、 「ううん、なんでもない。バイバイ、浩貴、翔多」  それだけ言って、仲良しの女子生徒の元へ戻っていった。 「なんだよ、あいつ。変なの、なあ? 翔多」 「…………」 「翔多?」  返って来ない反応に、浩貴が翔多を見ると、めずらしく、本当にめずらしく、彼は沈思黙考していた。……こんなふうに真剣な顔をしている翔多は、すさまじいほど綺麗だ。 「おい? 翔多? どうしたんだ?」 「え? あ、ううん。なんでもない」 「具合でも悪いのか?」 「どうして? 全然元気だよー。それより今日は帰りにパティストリ―・Kで、ケーキセット食べていこうよ」 「あ、いーねー」  実は二人とも甘党なのだ。 「じゃ急がなくっちゃ。あそこすぐに満席になっちゃうから」 「ああ」  翔多のさっきの様子に、少し引っかかるものを感じながらも、浩貴は笑顔で応えた。  幼馴染のミカコのことを、浩貴は妹のように大切に思っていた。  それに彼女は、間接的にではあるが、浩貴と翔多の関係を親友同士から恋人同士へと変えさせたきっかけであった。

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