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第11話 ハプニング
どうすればミカコへのいじめをやめさせることができるか。
浩貴も翔多も様々な意見をお互いに出し合い、もういい加減、意見も出尽くしたときだった。
翔多が不意に言った。
「もうさー、いろいろ回りくどいことは止めて、いっそのことストレートに、『いじめはよくない』って、クラスの女子に熱く語ればいいんじゃないかな。ほら、人という字は人と人が支え合ってできているとか、金八先生みたいに」
「金八先生より、ごくせんとかGTOっていう感じのほうが、女子には効くんじゃないか?」
「えー? 金八先生のあの熱さがいいんだよ。オレ、何回目かの再放送で見たけど、感動してちょっとウルッってきたもん。おまえたちは腐ったりんごなんかじゃなーいっ……ん? みかんだっけ? ……てさ」
翔多が金八先生の真似(のつもりなんだろう、本人は)をまじえて言う。
「じゃ、それ一回、女子の前で語ってみれば?」
浩貴が半分呆れ顔で言うと、翔多はいかにも、なんで? という表情をした。
「なに言ってんだよ、そういう役は浩貴以外、ハマり役はいないでしょ」
「はあ?」
「だって浩貴、人気者だし、女の子に超モテるし。浩貴王子様が熱く語れば、女子生徒はみーんな言うこと聞くって、絶対」
ピシッと人差し指を立てて言ってのける翔多に、浩貴はきっぱりと断ってみせる。
「そんなのは、い・や・だ」
「まずはTATUYA行って、金八先生のdvd借りてこようよ」
なのに翔多は浩貴の拒絶などどこ吹く風だ。
「嫌だって言ってるだろ!」
浩貴は思わず力が入ってしまい、翔多のほうへ身を乗り出した。
結果、二人は至近距離で見つめ合う形となった。
浩貴の目の前に翔多のドアップがある。……見惚れてしまった。
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