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第12話 二人のなれ初め
初めて見たときから、奇跡のように綺麗な少年だと思ってはいた。
深い意味などなく事実としてそう思っていただけだ。
そんなふうに思っていたのは浩貴だけではない。
岡利 翔多の美貌は、地元では知らない人間はいないくらい有名だったから。
でも、改めて彼の顔を間近で見つめてみると、息を呑むほど綺麗だと再認識させられた。
柔らかそうな肌は、こんなに近くで見ても毛穴ひとつ見えないし、潤んだ大きな瞳はまさに吸い込まれそう。瑞々しい唇はどこか赤ちゃんを思わせるかわいらしさで……。
触れたい……。
刹那、浩貴の心はその感情だけに支配され、気づけば翔多の唇へ自分の唇を重ねていた。
そう、キスをしたのだ……翔多に。
初めて知る翔多の唇は、思っていたよりもずっと柔らかくて、少しひんやりとしていて、うっとりとなるくらい気持ちいい。
浩貴はその流れのまま、翔多をカーペットの上へ押し倒してしまった。
「えっ……? ちょっ……、浩貴?」
おそらく翔多はその瞬間、なにをされたのか分からなかったのだと思う。
思考停止状態で浩貴にされるがままだったが、カーペットの上に押し倒され、ようやく思考が動きだし、自分がなにをされたのか、このままだとなにをされるのか、悟ったのだろう。
ひどく戸惑ったような声を出した。
浩貴は、……気づいてしまった。本当の気持ちに。
キスをしたことで、浩貴は翔多への本当の気持ちに気づいてしまった。
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