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第14話 二人のなれ初め③

 浩貴本人がいまだ混乱の只中にいた。  これからどういうふうに翔多と接すればいいのか、あんなふうに告白なんかしないで、冗談で済ませたほうが良かったんじゃないか、告白したせいで親友としての翔多まで失ってしまうのではないか。  様々な思いや不安が渦を巻き、途方に暮れる気持ちだった。  気がついたばかりの恋心を胸に抱き、浩貴は自宅までの道を思い切り走った。  その夜はほとんど眠れないまま、次の朝を迎えた。  ……本当にどんな顔をして翔多と会えばいいのか。  翔多はどんなふうにオレと接してくるのか。  浩貴は寝不足でボーッとしたまま、遅刻ギリギリに教室のドアをくぐった。  だが、当の翔多は、まったくいつもと変わらなかった。  なにもなかったかのように、無邪気な笑顔で浩貴へ話しかけてきたのだ。  それはその次の日も、またその次の日も同じだった。  翔多はまったく変わらなかった。親友からの愛の告白などなかったかのように。  浩貴はそんな翔多を見て、どう表現すればいいのか分からない、複雑な気持ちになった。  安堵したような、がっかりしたような……。  そして浩貴なりの結論を出した。  多分、翔多はキスも告白もなかったことにしてしまいたいのだと。二人の親友関係を守るために。  しかたないと思った。なんといっても、オレと翔多は男同士だ。同性にキスされ、押し倒され、愛の告白をされても、困惑こそすれ、うれしいはずがない。  まだ避けられないでいる分、マシなのかもしれない。  親友としての関係を続けようとしてくれていることを、喜ばなければいけないのかも。  ……そんなふうに考えてはみるものの。  失恋のショックは、浩貴が想像していたよりも大きかった。

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