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第16話 思いが通じる夜

 浩貴のほうも翔多への思いが友情から恋愛感情へ変わってから……正しくいえば、変わっていたことを自覚してから、まだ三日しか経っていないのだ。  以前のように屈託なく翔多と接するのは無理だった。  再び気まずい沈黙が二人のあいだを通り抜けていく。  翔多は何度かの逡巡のようなものを繰り返したあと、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。 「オレさ、浩貴……」 「うん……?」 「オレ、あのとき、浩貴に見惚れてたんだ……」 「……え?」  ……あのときって、三日前のキスと告白のことだよな? 翔多がオレに見惚れてたって……、それって……? 「浩貴がオレにキスしてくれたのが、あと少しでも遅かったら、……きっとオレのほうが浩貴にキスしてたと思う」 「翔多……」  思いもかけない翔多の言葉。  浩貴は彼が今、どんな表情をしているのか見たかったが、深くうつむいてしまっていて見えない。  ただ、翔多の声も華奢な肩もかすかに震えている。春の夜風がまだ少しひんやりとしているせいだろうか? それとも……。 「あのときさ、浩貴の顔がすごく近くにあって、オレ、ドキドキした。本当に浩貴って端整な顔しててかっこいいなって、そう思った瞬間、急に浩貴にキスしたくなって……。でも、気づいたときにはオレが浩貴にキスされてた」  そして翔多はやっと顔を上げると、泣きそうな表情で笑った。

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