16 / 177
第16話 思いが通じる夜
浩貴のほうも翔多への思いが友情から恋愛感情へ変わってから……正しくいえば、変わっていたことを自覚してから、まだ三日しか経っていないのだ。
以前のように屈託なく翔多と接するのは無理だった。
再び気まずい沈黙が二人のあいだを通り抜けていく。
翔多は何度かの逡巡のようなものを繰り返したあと、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「オレさ、浩貴……」
「うん……?」
「オレ、あのとき、浩貴に見惚れてたんだ……」
「……え?」
……あのときって、三日前のキスと告白のことだよな? 翔多がオレに見惚れてたって……、それって……?
「浩貴がオレにキスしてくれたのが、あと少しでも遅かったら、……きっとオレのほうが浩貴にキスしてたと思う」
「翔多……」
思いもかけない翔多の言葉。
浩貴は彼が今、どんな表情をしているのか見たかったが、深くうつむいてしまっていて見えない。
ただ、翔多の声も華奢な肩もかすかに震えている。春の夜風がまだ少しひんやりとしているせいだろうか? それとも……。
「あのときさ、浩貴の顔がすごく近くにあって、オレ、ドキドキした。本当に浩貴って端整な顔しててかっこいいなって、そう思った瞬間、急に浩貴にキスしたくなって……。でも、気づいたときにはオレが浩貴にキスされてた」
そして翔多はやっと顔を上げると、泣きそうな表情で笑った。
ともだちにシェアしよう!