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 第18話 日常

「行ってきまーす」  浩貴は玄関の扉を閉めると、家の前に置いてある自転車に乗った。  どこまでも高い空の下、颯爽と自転車を走らせる。  朝の空気は凛と澄み、頬にひんやりと心地良い。  少し走ると小さな商店街が見えてきて、それを抜けるとすぐに翔多の下宿先がある。  恋人として付き合うようになってから、登下校は二人一緒にしている。  翔多の下宿先のほうが学校に近いので、浩貴が彼のところ寄ってから、二人揃って学校へ行くというのが決まりのコースだった。    ちなみに翔多の実家は高級住宅街にあるという話だ。  幼稚園も小学校も公立ではなく、お金持ちの子息、令嬢ばかりが通う名門私立で、専属運転手つきの高級車で送迎されていたらしい。  しかし、翔多にとってその環境は、籠の中の鳥のように退屈でたまらなく、小学校を卒業すると同時に家を飛び出し、母親の兄夫婦のところへ下宿を決め込んだ。  翔多の両親は、彼をエスカレーター式で大学まである有名私立中学へ通わせるつもりだったみたいだが、翔多は受験をすっぽかしたらしい。  ……そのおかげで、浩貴は翔多と出会うことができた。今、振り返ってみれば、運命のようなものを感じる。 「浩貴―、遅いよー」 「ごめん、ごめん、じゃ行こうか」 「オーケー」  こうして二人の高校生活の一日は始まるのだった――。

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